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現役税理士に聞いた!タワーマンション節税の実際と今後

近年、相続税の節税対策として話題を集めている「タワーマンション節税」。

タワーマンションの時価と相続税評価額の差を利用した効果的な節税方法であり、マンションの販売会社もこれを謳い文句に販売を強化してきました。
一方で、行き過ぎた節税対策であるとして税務当局は課税強化に動くという方針が打ち出されています。

節税対策として有効な手段なのかどうか、タワーマンション節税の実際と今後について早瀬税理士事務所の早瀬先生にうかがいました。

[著]高垣 英紀

[取材協力先・監修]早瀬税理士事務所

1.最近話題のタワーマンション節税とは?

タワーマンション節税とは、現金や預金といった資産をタワーマンションに組み替えることで相続税を節税する方法をいいます。
タワーマンションの販売価格と相続税評価額の差を利用した節税方法です。

2.なぜタワーマンションが相続税の節税になるの?

●タワーマンション節税のしくみ

タワーマンションは低層型のマンションと比べ敷地面積が狭く、上層階と下層階の価格に差があります。ここが節税におけるポイントのようです。

早瀬先生は次にようにおっしゃっています。

「マンションの評価は、マンションの敷地と建物全体に対する評価額に区分所有割合を乗じて計算します。タワーマンションの場合、敷地が狭いところに高い建物を建てるため、敷地部分の割合の面積が小さくなります。土地の価格が高くても、一室あたりの敷地の面積は少なくなるため、相続税評価額は低くなります。建物についても、タワーマンションでは、上層階ほど高額ですが、相続税評価では、面積のみで評価するので、上層階と下層階とで評価は変わりません。以上のことから、土地・建物双方で、購入価格より、相続税評価額が大幅に下がります。」

●タワーマンションでどれだけ節税できるか

どれだけ節税できるか、モデルケースを使ってシミュレーションしてみます。

【モデルケース】

・遺産総額4億円のうち2億円の預金を使ってタワーマンションを購入

・タワーマンションの相続税評価額は5千万円

・被相続人は子供2名

A. タワーマンション購入前(普通に相続した場合)の相続税額

ア.相続税の課税価格

 遺産総額4億円‐基礎控除{3,000万円+600万円×2(法定相続人の数)}=3.58億円

 イ.子供2人の相続税の合計額

 {3.58億円×1/2(法定相続分)×40%(税率)‐1,700万円(控除額)}×2人=1億920万円

B.タワーマンション購入後の相続税額

ア.相続税の課税価格

遺産総額2.5億円‐基礎控除{3,000万円+600万円×2(法定相続人の数)=2.08億円

イ.子供2人の相続税の合計額

(2.08億円×1/2(法定相続分)×40%(税率)‐1,700万円(控除額))×2人=4,920万円

C.タワーマンション購入による節税額

 A‐B=6,000万円

モデルケースの場合、課税価格が1億5,000万円減少することから6,000万円の節税ができることになります。

3.節税効果が見込める条件とは?

●節税効果が見込める条件

タワーマンション節税の場合、販売価格と相続税評価額の差が大きければ大きいほど節税効果を見込むことができます。早瀬先生は次の条件を節税効果が見込める条件として挙げています。

・上層階であること。

・希少価値のある物件であること。ブランド地区(都心3区の高級住宅地など)

・居住者の質のいい物件であること。外国人割合が低いなど。

・信頼のある大手ゼネコン・販売会社の物件であること。

「この条件に合致すればするほど販売価格と相続税評価額の差は大きくなる、つまりより大きい節税効果が見込めということです」(早瀬先生)。

この中でも、特に「上層階であること」については分かりやすい条件です。同じマンションで同じ間取りと面積であったとしても、上層階か下層階かでその販売価格は大きく異なります。また、上層階は富裕層を対象とした豪華な部屋が多く、なお一層価格差が大きくなる傾向にあるようです。

●マンションを「賃貸」にしてさらに評価額を下げる

マンションを賃貸すると、相続税の評価額を下げることができます。賃貸する前に比べ、マンションのうち建物部分は70%、土地部分は地域により異なりますが東京都の場合79%の評価額となります。また、場合によっては小規模宅地等の特例を受けることにより、土地部分についてはさらにその50%の評価額となることもあります。

4.タワーマンション節税のリスクは?

早瀬先生はタワーマンション節税のリスクとして次のようなことを挙げています。

・新築で購入しても、買った瞬間に中古物件となるため、実勢価格は下がる。

・外国人割合が多いなど入居者の問題で、人気を維持できるか不明。

・高価格の不動産は、好不況の波を受けやすい。

・地震・停電などの影響を受けやすい。

・法改正や通達の変更で今後、節税効果が下がる可能性がある。

タワーマンションを買ったからと言ってすぐに相続が始まるわけではありません。相続発生時までの価格変動リスクや法改正のリスクがあるので、現状考えられる節税効果を本当に得ることが出来るかどうかは未知数な部分もあるようです。

5.タワーマンション節税の今後予測、実際どうなの?

タワーマンション節税の実情について、今後はどうなっていくのでしょうか?現役の税理士の見解を伺いました。

「タワーマンション節税の今後予測としては、当局が課税強化に動くと考えています。

保険でも新しい節税商品が出るたび、当局がいたちごっこのように課税強化に動くことがたびたびありました。タワーマンション節税もかなり目立ってきているため、国税庁が課税強化の方針を打ち出しています。今後の見通しとしては、節税効果が少なくなり、よほどいい物件でないとマイナス面の方が大きくなると考えます。
マイナス面とは、買った瞬間に中古となり、市場価格が落ちること、外国人割合の増加による不動産価値の下落、キャッシュで購入した場合の納税資金の不足などです」(早瀬先生)。

タワーマンション節税の今後については、国税庁が方針を打ち出しています。

行き過ぎたタワーマンション節税には、財産評価基本通達第6項に基づく「引き直し課税」を視野に入れて対応するという趣旨です。

この引き直し課税とは、*財産評価基本通達により評価することが著しく不適当と認められる財産の価額を、通常の価額(時価)に評価し直して課税するというものです。

*財産評価基本通達…相続税や贈与税の計算における財産評価の指標となる国税庁の通達

またタワーマンション節税の防止策として、2018年にもタワーマンションの評価額にメスが入るようです。2016年1月24日の日経新聞の一面で、総務省と国税庁がマンション高層階の相続税評価額について、見直しの検討に入ったという記事が掲載されています。

こういった最近の動きもあり、早瀬先生が見解で示すように、今後はよほどいい物件でないと節税の効果はあまり見込めないようです。タワーマンション節税を考えている方は、いかに良い物件を購入することができるかが鍵になりそうです。